夏休み、模擬面接週間のある日

「今日のお申込みの方の中に欠席数が多い生徒さんがいます。先生から相談に乗って欲しいとご依頼がありました。」

その日の面接担当者は三人いるので、誰に当たるか分からない。状況を聞いて相談ポイントを想定しておく。

こんな時は大抵私が担当する巡り合わせとなっている。

今年も私の担当校からはレアケースの相談がある生徒か゛早々に来所している。

毎年学校をシャッフルするのに私が担当する学校にはレアな相談や難しいケースの生徒さんがいる。そこに引き寄せられるのか、私が担当すると相談しやすくなるのか? 会ってもいない訳だから前者なのでしょう。それにしても毎年勉強させて頂いています。

さて、件の生徒、やはり私の担当となりました。

予約時間よりも早く。

一人で来所するのが嫌だったのかな?
一時間後に予約しているお友達と一緒に来ました。

希望しているお仕事は体力が必要でかつ朝早く起きなければならない仕事。

あれ?
欠席が多いと言っていたよね。

高校生の就職は基本、学校の先生が斡旋します。そこにおいては自分の書いた履歴書の他に成績や学校生活の様子が記載された調査書が添付されます。

企業は成績等も見ますが、

必ずチェックされるのが欠席日数です。

ある有名企業の人事担当者は欠席日数の欄に0以外の数値が入っていたら要注意。採用するとしてもおそらく1か2まででしょう。

入社後に追跡調査をしたら0と1、また1と2では離職率が全然違う。と説明して下さいました。

若年者の離職率の高さは昔から問題ですから人気企業もこのような対策をするのは納得ですが、

人手不足の企業においても

いくら成績が良くても欠席日数が多いと採用出来ない

と言う声は聞こえて来ます。

逆に成績が悪くても、毎日来てくれれば仕事の指導は出来る。しかし来ない事には何も積み上がらない、出来ない、知らないまま。いつまででも仕事を任せられない。

そうですよね。
毎日来ていても、ようやく育って来たのにいきなり辞められた!と言う話も何度聞いた分かりません。

沢山の人事担当者や社長の顔が思い浮かびます。

さて、今回の生徒さん、今日の目標を聞いたところ、欠席が多い事をどう説明したらいいか教えて欲しい、との事。面接練習の場ではあるが、欠席日数に対する説明の見通しが立たなければ他を考えられる筈がないよね。

目の前には絶望的な表情をして、助けてくれと言わんばかりの生徒が座っている。

数字を聞くと、確かに無理と言われる数字を超えている。

さてどうする?

ああ言えばいい、こう言えばいい、

と言う特効薬的なアドバイスはしません。

生徒の休んだ理由、
就職や仕事に対する考え、
この求人の仕事に対する思いなどを丁寧に聞きます。

絶望的になり思考停止していた生徒さんの表情が動きます。

学校に行けなくなる生徒は多くいます。
就職を希望する生徒には不登校経験の人も少なからずいます。

はじめの行けなくなる理由はその子にとってはやむを得ない事だったのに、長引く事によってサボっているような感覚が芽生え、自己否定をしている生徒も多数います。

この自己否定があると、就職しても続けられるかしら、と言う不安がよぎります。

この生徒は本来は明るく思いやりのある優しい子です。詳しくは書けませんが不幸な事が重なったようです。
家族の看護も家事もバイトも一人で引き受けて疲れ切って学校に行けない日が続き、それが引き金となって休む日が増大しました。ぼんやりしている訳ではありません。

うーむ、普通は採用してもらえないレベルの欠席ではあるが、人物に触れたらきっと評価してもらえる。

緊張せずに、諦めずに自分の事をアピールしてもらおう。

希望している職種、会社の様子を考えて作戦を立てる。そして本人の自己評価、自己効力感を高める、高める、高める。

なんか出来そう、
言えそう、
春からこの会社で仕事をしているイメージが湧いてきた!

よし、あとは何度も言ってみよう。
自分が考えた事だから大丈夫。
少々つっかえても、話す順番を間違えても言えるよ。

笑顔で終了。

友達の模擬面接の終了を待って笑顔で帰って行きました。

学校の先生から感謝の電話が入ったと学校の担当者から報告がありました。

模擬面接なんて行きたくないと言っていたが、行って良かったと何度も言っていたらしい。

良かった。

そして昨日、内定獲得の通知が来たとのご報告。

よかった。

やった!

きっと大丈夫と信じていましたが、
やはり気になるもの。

結果が出てホッとしました。